2018年09月23日

天高く馬肥ゆる、秋

一筆啓上、火の用心お仙泣かすな馬肥やせ。本多重次

日本一短い手紙として有名なこの一文。現代ならショートメールかツイッターで済ませられる内容。しかし、本多重次は、長篠の合戦の最中に妻にあててしたためました。「火の用心。お仙泣かすな 馬肥やせ。」武士が今まさに合戦始まらんとするそのさなかに、想像して見ましょう。木株に腰掛けて携帯を打つ本多重次を。その神経は只者ではありません。
この本多重次はてっきり安房の国に本拠を構えた本多家かと思ったら、三河国には本多性が多く、家康の重臣には本多と名の付く重要な家臣が結構いるものなんですね。本多忠勝、本多正信。で、この安房の国の本田家は徳川の四天王、本多忠勝の治めた大多喜城が起源で、地元ではNHKの大河ドラマに我が地元の本多様を主人公にとテレビドラマの誘致合戦が町をあげて繰り広げられているんです。町興しに大河ドラマを、というのも本末転倒ですが、町を歩くとあちこちにこの本多の幟旗がたなびいて、
「ねえ、この街はせいぜい3、4万の三浦市のような地方都市なのに、どう、これ、本屋さんがいっぱいだね。スゴイよね!」
な〜んてわたしら夫婦は感嘆仕切り、我らが町ではツタヤさんは無くなるし、三浦海岸の本屋さんは店仕舞いするしで寂しく思っていたのがこの街ではあちこちのお店の前に本屋さんの幟旗が。スゴイなあ、この読書人口は。
本の一字の幟旗は本多忠勝の合戦旗だと、おバカな私たちの一人合点も後で気がついて大笑い。極楽トンボのシェフとわたし。

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さて、ネットで様々な評判を聞くと、これほど当てにならないものはありませんが、要は自分で確かめてみること。これしかありません。
美味しいパンづくりは結局は作る人間の舌先三寸(オット、この表現は、ちょっと違う、よね?)、小麦は関係ないと言ってもそれもまた違いますが、小麦に頼っているだけでは美味しいパンは作れない。
夏休みのブーランジェリー巡りは思った成果はあげられませんでしたが、その後お店で国産小麦を使ってパン作りを試みてわかったことがいくつかあります。
オープン以来強力粉はずっとカナダ産の🇨🇦強力粉で迷うことなく作り続けてきたのですが、なぜか国産小麦信仰がもてはやされて国産小麦がサイコーなんだと勘違いされる方が多いのはなぜなのかと、パン・オ・ヌフは考えました。わたしも人一倍ニッポンが大好きですがだからと言って何でもかんでも国産がいい、国産なら安全だともてはやすのも怖いものがあります。
なんども言うようですが、この国の偽装も諸外国に負けず劣らず凄まじいものがあります。フォルクスワーゲンの偽装を嘆いていたら今度は日産、三菱、ここにきてマツダまで、私たちは何を信じれば良いのでしょう?

まず安全は産地にあるのではなく、その前に作業場にあります。厨房で安全のために、品質の維持のために気を配っているか?清潔を保っているか?どんな粉を使っても美味しいパンは焼けるんだ、と言うほど世の中は甘くありません。
国産小麦にあまり乗り気でなかったのは、まずその価格が高すぎることにあります。高ければ良いと言うのは違います。
国産小麦を使うことを巧みに戦略として利用するその風潮がまず嫌いなのです。私たちは国産小麦を使っていますよ、なにより食の安全のためにお客様のためにこそ国産に徹しています、と言うそのあざとさがわたしは嫌いなのです。

偏屈といわば言え。偏屈に徹することもものづくりの大事な要諦。偏屈に徹するとはどこまでも自分を信じることなのですね。しかし、ひとは、往々にして自分を信じきれない。自分の至らなさを生まれてこのかた何十年も見てきただけにそんな自分を信じられない。だからこそ、ひとは、自分の道を早くに定め、自分の欠点があからさまになる前に己が道を是と定めて若いうちから一心不乱にやよ励め、鉄は熱いうちに打て。

わたしたちはパン屋を年を重ねてから始めたので信じるだけの自分がありません。パンの技術も応用も無手勝流。柳生新陰流には遠く及ばないけれど、偏屈だけは半端じゃない。そこを拠り所にして、シェフの美しいパン作りに応えたい。

ビゴさんが亡くなりましたね。ニッポンにフランスパンの醍醐味を伝えてくれたビゴさんはまだ76歳という若さでお亡くなりになりました。2、3年前、私たちのお店に来られたビゴさんそっくりの方はもしかしたら本当にビゴさんだったのかもしれない。?
不意に入って来られてバゲットを一本鷲掴みにされて、レジに持って来る途中に気がついてエピも一本ついでのように掴んでニッコリ。
「今の人、ビゴさんじゃない?」
えっ?と慌てて店の外を覗くと紅いスポーツカーに乗って颯爽と走り去っていかれた後ろ姿はもしかするともしかして?

ビゴさんも偏屈な方だったのでしょうか?愛すべき偏屈の詩人。
ご冥福をお祈りいたします。わたしたちもビゴさんのように美味しいパンを作りたい。



偏屈なパン・オ・ヌフの世界へようこそ


posted by dady at 12:20| 神奈川 ☁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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