2018年03月25日

奇妙な1日。(奇妙な果実)

暖かくなりましたね。(先週の雪のお彼岸はなんだったの?)
この日の彼岸の中日は私たちの三男坊、クララの九回目の命日でした。子供たちといっしょに育ったクララは本人も(本猫も?)立派に三男坊のその自覚はあったようです。そうか、クララよ、永遠なれ!

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今日はお花見日和かな。三浦ではひと月ほど前からの河津桜祭りの賑わいも明けぬうちから今度は正真正銘の桜の満開の木の下で。なんだか桜疲れで嬉しいやら悲しいやら。個人的には桜はソメイヨシノ一本で行きたいもの。河津桜は河津で楽しめばいいんじゃない、というと罰当たりめがと商店街の皆様に叱られそうですが、大きな声では言えない本音。(ごめんなさ〜い)笑。とはいえ、京急線沿線沿いで見る河津桜と黄色い菜の花の共演は本当に心が癒されます。だから、人間って、ほんと、欲が深いんですね。

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さて、昨日の土曜日もそんな春の一日。薫風かおる、ん?これは五月か。早春の風薫る子供達の春休み最初の土曜日でしたが、これが朝からお客様が来ない。お昼を前にほんのちらほら。背筋に冷たいものが、、、。ああ、一年中桜祭りなら良いのに、、、。(笑)
ところがどっこいわからないのは女心と春の営業。午後からじわじわじわじわとお客様がおいでになられて、五時の終業時にはノアレザンひとつを残して完売(?)。人生はわからない。諦めた時がジ・エンド。

諦めきれない私たちはまだまだパンづくりの遥かな道の途上。美味しいパン作りと美しいパン作りは車の両輪。「フリュイ」の形が気に入らない。

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「ボヘミアンマンゴー」の形が一定しない。

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おまけに昨日は「薔薇の名前」の花びらの開きようが納得できない。

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これはこれは、これは私たちの大きな課題です。見ているだけで引き込まれていくようなパン作りが私たちの目標です。そして食べたらさらに満足する。桜だってあの咲き誇る匂うような美しさあっての桜です。パンづくりの奥は誠に深い。桜暗黒方丈記。嗚呼、奇妙な果実。

「奇妙な果実」はビリー・ホリディが唄った名曲です。残酷な歌ですが、私たちの心の残酷さは同じ同胞にも向けられます。今年になってスタートしたレコード盤聞き納めの大音楽会もなかなか一日一枚は至難の技。一年どころか、この調子では五年はかかりそうな塩梅です。昨日は仕事も終えてお風呂に入り、さて、取り出した一枚は、、、

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今日は、そんな私たちの美しさの一つの基準をご紹介します。オノ・ヨーコさんは誤解された日本人の最右翼と言って良いのでしょうが、彼女ほど美しい人は他にいない。初めて「無限の大宇宙」を聞いた時の驚きと感動。全二十二曲。傑作、と言って過言ではありません。あれから四十数年の歳月が流れ、彼女の体調がすぐれないと聞き、月日の残酷さを思い知ります。全曲ご紹介したいのですが、今日はこの歌を。「サマンサの死」。どうぞ、心をオープンにして聞いてください。



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今月はもう一日、三十一日土曜日、営業致します。


ようこそ桜の下の今が盛りのパン・オ・ヌフへ。




posted by dady at 11:06| 神奈川 ☀| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月11日

バゲットを待ちながら

このところ、お問い合わせに「バゲットはありますか?」というお電話や、お店でも「バゲットは、、、?」と見あたらない売り場の中で戸惑い気味に訊ねられる方が結構いらっしゃいます。
「パン・ドゥ・ミはもうないのですか?」
という方は以前から多いのですが、このところバゲットのご希望が多いのは何か意味があるのかしら?
実をいうと、当店のバゲットは絶品なのです。( またぞろ出ました。お国自慢。笑。)
パン屋さんならどこでもバゲットには深い思い入れがあると思いますが、御多分にもれず、当店のシェフにも深い泉のような思い入れがあるのです。(深すぎるゥ〜)
バゲットはとっても単純なパンです。小麦粉と水と塩、モルト、そしてイースト。これだけ。これだけの材料で作るパンの味にお店によって味が違うのは何故かしら?もしかすると違わないのかもしれない、、、?
小麦粉の種類?塩の選択?水の量?酵母の違い?ミキサーで捏ねる時間や捏ね上げ温度、捏ねる強度、焼く温度、その時間。最初ちょろちょろ中ぱっぱ、赤子泣いてもオーブン開けるな!(温度が下がる)それらの組み合わせで変わる味の摩訶不思議。そして生地を扱う職人の腕次第で姿形は千差万別。そのどれもが深〜い深〜い味わいをたたえてその結果としてのバゲットがここにある。深い泉のようにここにある。そう。バゲットは毎日違う。

昨日来られたお客様。当店のバゲットを暫くジーと眺めて、曰く。「うつくしい」。
嬉しかったですね、この美しさをご理解いただけて。先週のバゲットは、あの不測の事件のせいで形の見目麗しくないバゲットが何本が混ざってしまったのですが、例のオーブン放り込み事件のせいですが、今週はその改善策が功をそうし、私たちも自慢できる一品に焼きあがっていたのです。

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そう。できたのです。マシーンが。ジャジャン!小麦粉も塩もモルトも変わらない。生きるか死ぬか、それは分割にかかっている!

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ジャン!

(笑い)

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それがマシーンかと問うなかれ。
ほら。意外といけてるこの分割の正確さ。

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分割の時間短縮と正確な生地の切り分けとその隔たりのなさ。フランスの「人権宣言」に勝るとも劣らない自由、平等、博愛。ああ、フランスパン。

昨日は閉店間際に来られたお客様が「バゲットはもうないのですか?」
ごめんなさい。売り切れてしまいました。「いつも仕事で遅くなるので、ああ、今日はやっていると思ったんですが、、、こちらのバゲットはほんとうに美味しいですね」。
そんなにも当店のバゲットを求めてくださってありがとうございます。代わりにベベを買って行っていただきました。それもありがたいことです。
バゲット、カンパーニュ・ベベ、パン・ドゥ・ミ。
尽きぬ泉。


ようこそパン・オ・ヌフの深い世界へ


posted by dady at 17:33| 神奈川 ☀| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月04日

鳥、うたう。

昨日は暖かい一日。春はもうすぐそこまで来ているのでしょう。
厨房にいると先々週あたりから、まだ真っ暗な早朝お店に入ると「あっ、ちょっと違うな」という気配があるもので、それが先週は「違う違う」。そして昨日は生地の分割の最中に戸外で鳥の鳴き声が。まだ遠慮がちですが、それでもかすかにチリチリと。カードを持つ手が止まり、耳をすまして「ほらっ」、生地の冷たさを忘れさせてくれる、そんな温かい唄声なのですが、しかし昨日は大失敗。バゲットをオーブンに放り込む時、例の手製のスリップピールの放り込む瞬間のその刹那、なにを思ったかためらい傷、引きが一瞬止まってバゲット生地がひっくり返り、ウワッっと大慌て、鉄板から落っこちそうな生地をシェフが果敢に火傷の危険をものともせず、手袋で引っ張りあげてその間炉内の温度はさがるさがる。うわああああああ!
これがほんの一二三秒のことなのですが、あゝ、春はまだ遠い。そう実感されるこの一瞬のドラマ。うっ〜〜!

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壱引く壱はゼロ。
ふうっとため息。そんな悲喜劇のパン・オ・ヌフですが、ありがたいことに今週もたくさんの方に来ていただき感謝感謝の毎日ですが、今週はこんなパンがカムバック。「シェーン、カンバック!」ってヤツですな。

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クリスマス・シュトレンはクリスマスだけじゃない。シュトレンを菓子パンにアレンジしてこれはこれは「プチトランバター」を彷彿させる「プチバトー・シュトレン」の登場です。不定期に登場する月光仮面。白いマントに身を包み、ヌフフふ。

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閑話休題。昨日はバゲットの製造に失敗した教訓を噛みしめて、バゲット作りの大改革に乗り出すことにしました。ジャン。
それは何かと言うと、じつは生地の分割と成形に機械を導入することにしたのです。ジャジャン!
まずは発酵させた生地をテーブルにあげてシェフとふたりでバゲット生地なら250gに分割して、これを20センチ程度の長さにまとめて一旦寝かせてベンチタイムを取り、じつはこのときの生地の状態がその後の成形に大きく影響するのです。20センチのベタ生地はけっして均等に20センチの全長の中に生地の塊があるわけではなく、真ん中が微妙に痩せていたり、端がびみょうに膨らんでいたり、そしてそれは生地が生地だけに、バゲット生地は水分が多いのでもう修正がほとんど不可能なのです。その不均衡なだらっと「のび太」カタマリを40センチ近くにまで一生懸命均等に伸ばして伸ばしてええいこれでもかっと成形、そしてオーブンへ。
見目麗しいバゲットは、分割時に八割がた決まってしまう。後戻りはできない。では大きなパン屋さんはどうするかというと、この工程をほとんど機械(モルダーという分割機)でやり過ごしてしまうのですが、パリの下町の黄昏時の、裏道を一本脇にはいった家内制手工業のパン・オ・ヌフにそんな余裕も資金もなく、機械の導入は夢のまた夢。
しかし。
そんな時こそパン・オ・ヌフ。機械を買う余裕がないのなら作ればいい!おいおいおい。(笑笑)
作っちゃいました。パン・オ・ヌフ。爆笑やれないことはないパン・オ・ヌフ。子作りからパンづくりまで。機械の導入もへっちゃらさ。うんとうんと単純化して、こんな風に作ればいい。さて其の結果や如何に?
マシーンの大公開は来週まで、乞うご期待!バカは死にゃにゃキャ治らない。

そんな私たちですが、「プチバトー・シュトレン」を作ることになったのには、じつは、訳があります。その訳は、ごめんなさい、ナイショですが、ラブ・マイナス・ゼロ。愛から引き算はできないというお話。

さてボブ・ディランです。ディランの名曲は多すぎてとてもご紹介などできない。love minus zero.



ウォーカー・ブラザーズは大好きですが、それでも本家はこちらこそ。💁‍♂️ バレンタインも彼女を買うことはできない。( タバコに火をつけているのは懐かしのドノヴァンです。懐かしい人には、ですが、)





ようこそ、ホワイトデイにはまだ間に合う。ヌフの「プチバトー」を貴女にも、メルシー!

※追記です。

「彼女はまるで沈黙のように話しだす。」この出だしですでにうっとり。
「10セントストアやバス停で人は状況について語り、本を読み、引用を繰り返し、結論を壁に書く」
もう堪りませんよね、少年のわたしはこれだけでノックダウン。そしてラストは、
「風はハンマーのように吠え、夜はつめたく雨も降る。彼女はまるで大鴉のように、わたしの窓辺に疲れた羽を休ませる。」ハイ、座布団3枚‼️




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posted by dady at 10:37| 神奈川 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする